吉田 真也

ラフカディオ・ハーン -海界(うなさか)の風景-

2021年、ビデオ(20分59秒)

©︎ Yoshida Shinya

CURATOR’S NOTE

19世紀半ばにギリシア(当時は英国の保護国)で生まれ、ヨーロッパやアメリカ、西インド諸島などを旅した後に、明治の日本へやってきた文学者がいた。ラフカディオ・ハーン、後に日本国籍を取得して小泉八雲と名乗ったこの文学者は、各地で女性たちによって語り継がれてきた伝説や怪異譚に魅せられて、70編もの再話文学を著したことで知られる。

吉田真也は、ラフカディオ・ハーンの漂泊の人生と、彼の語り部であり人生における重要な人物でもあった母ローザと妻セツという二人の女性に注目して、彼が日本で記した紀行文「夏の日の夢」を起点に、ハーンの目になり代わって、日本での彼の足跡を辿る。島根、熊本、長崎、いずれも入り組んだ海岸線と島々に囲まれた海辺の風景は、ハーンが出会った語り部としての女性たちと、海にまつわる異界の伝説とを想起させる。眼前の風景は記憶と連想の言葉を紡ぎだし、ハーンの幼少期のおぼろげな記憶と重なり合う。現代を生きる吉田は、世界中を転々としただけでなく、異界や古の時代をも行き来するハーンの世界主義的な姿勢に自身の感覚との共通項を見出すように言葉を重ね、多声的な物語を描き出す。(K.E.)

CREDITS

監督

吉田真也

スティーヴ・マックルーア、ブラコ・ムリー

出演

中村千恵子、へリンガー・カティ

ロケーション協力

小泉八雲記念館、浦島屋

翻訳

メディア・トランスレーション・センター

録音協力

サクシード、岡千穂

特別協力

小泉凡

PROFILE

吉田 真也(よしだ・しんや)

1994年、青森県生まれ、島根県を拠点に活動。
絵画のように完成された構図による複数の風景映像をクロスカットで繋ぎ、歴史的な事件や、ある人物の個人的記憶といった事実と、作家自身の言葉とが交錯するオーラルな語りと共に、風景の背後に潜む土地の複層的な記憶を呼び覚ますような映像作品やマルチチャンネルの映像インスタレーションを制作する。
主な作品発表に、「MEDIA PRACTICE 20-21」(東京藝術大学横浜校地、神奈川、2021)、「札幌国際芸術祭」(展覧会中止に伴いオンライン・プロジェクトへの参加、2020)など。