さわ ひらき

Polaris

2021、ビデオ(14分40秒)

©︎ Sawa Hiraki

*字幕はコントロールバーでON/OFFが可能です

CURATOR’S NOTE

徒歩1時間の距離は遠いか、近いか。そう問われた時の答えには、歩いた先にあるなにかとの関係性が反映されるのではないだろうか。

スコットランドのダンディー市に建つイギリス最古の公共天文台、ミルズ天文台に勤めるロバート・ロウにとって、何光年の彼方にある星との距離は、隣の人とのそれより近いのかもしれない。専門教育を受けたわけではない、独学の天文愛好家であるロウは、巡り合わせでミルズ天文台に職を得て、古式ゆかしい機材を操りながら、訪れる人々に愛してやまない天体の物語を語る。

さわは2013年にロウと出会い、宇宙、光、レンズといったものに強く執着する彼の存在に惹かれて、その日々の営みを撮影することにした。さわのこれまでの作品は、室内を無数の模型飛行機が飛び交い、やかんや木馬がひとりでに動き出すといった、現実にはありえない、しかし記憶や意識の奥底で人がたしかに持ちうる世界を視覚化した映像で知られる。二人は一見交わらないように見えながら、多次元空間の考えにもとづく空間と時間への意識を共有する同志といえよう。空の彼方であれ、人の意識の中であれ、実際の距離や時間、現実・非現実の境界に対する思い込みにとらわれることなく、私的で居心地のよい領域を創り出している彼らは、こことあちらの間は自分次第で自由に行き来可能であることを、私たちに示してくれているのではないか。(N.S.)

CREDITS

制作

さわひらき

声・出演

ロバート・ロウ

サウンド

田村文岳

オーディオ・マスタリング

木村健太郎

字幕翻訳

さわひらき

謝辞

ロバート・ロウ
グラハム・ドムケ
メトード・ブレジェク
中島吏英
ミルズ天文台・ダンディー

PROFILE

さわ ひらき(さわ・ひらき)

1977年、石川県生まれ。ロンドンおよび石川県を拠点に活動。
心象風景や記憶といったひとりひとりが持つ領域(テリトリー)を問う、映像作品を制作する。近年は映像を主軸に、立体、平面作品を交えたインスタレーションを手掛け、物理的な空間と意識の中の領域を交差させる試みが人間の意識の奥底をたずねる体験をうながす。
主な展覧会に、「ふたつのまどか」(DIC川村記念美術館、千葉、2020)、「潜像の語り手」(個展/神奈川芸術劇場、神奈川、2018)、「Reborn Art Festival」(宮城)「札幌国際芸術祭」(北海道)「奥能登国際芸術祭」(石川)(すべて2017)、「Under the Box, Beyond the Bounds」(個展/東京オペラシティアートギャラリー、東京、2014)、第17回シドニービエンナーレ(シドニー、2010)など。