佐藤 雅晴

I touch Dream #1

1999、ビデオ(サイレント)(3分34秒)、個人蔵 © Estate of Masaharu Sato

オオカミになりたい

2017、ビデオ(サイレント)、ループ、個人蔵 © Estate of Masaharu Sato

CURATOR’S NOTE

東京の美術大学で油画を学んだのち、デュッセルドルフのクンストアカデミーに聴講生として在籍した佐藤雅晴。《I touch Dream #1》は渡独まもなくの時期に制作した、佐藤にとって最初の映像作品である。外国での生活における絶望的な孤独、そして夜ごと見る悪夢に苛まされていた佐藤は、木炭デッサンでこの夢の断片を描き、一枚ずつ撮影してアニメーション映像とした。現実と夢のふたつの世界におけるきわめて個人的な不安は本作のなかで境界をほどかれ、普遍的な、アクチュアルな気配として立ち上る。

10年に及んだドイツ滞在を終えて帰国した2010年、佐藤は癌を宣告され、2019年に他界するまで作品制作は長い闘病のなかで行われた。佐藤の作品の代名詞ともなったロトスコープの技法は、実際の風景を撮影したビデオを一コマずつ分解し、膨大な時間と手間をかけてトレースしてアニメーション化するもので、現実と非現実、存在と不在の線引きを曖昧にする。日本では絶滅して久しいオオカミが単調な動作を繰り返す《オオカミになりたい》は、不確かさとともに奇妙な実在感を感じさせる。そのアンビバレンスに、私たちは自明のものとしてきたさまざまな線引きへとあらためて意識を向けざるを得なくなるのだ。(N.S.)

CREDITS

I touch Dream #1

制作

佐藤雅晴

技術アシスタント

佐藤マイベルゲン玲

モデル

下城賢一

オオカミになりたい

衣装

Mile Paxton

謝辞

大垣美穂子
KEN NAKAHASHI
イムラアートギャラリー
Estate of Masaharu Sato

PROFILE

photo by Art Collectors’

佐藤 雅晴(さとう・まさはる)

1973年、大分県生まれ、茨城県を拠点に活動、2019年逝去。

東京藝術大学修了後、2000年から2年間、国立デュッセルドルフクンストアカデミーに研究生として在籍。実際の風景をヴィデオカメラで撮影後、コンピュータ上でトレースし、ロトスコープ技法でアニメーション化した映像作品を制作。実写との差異から生じる違和感は現実と非現実の交錯を生み、鑑賞者の意識を覚醒させる。

主な展覧会に、「DOMANI・明日2020」(国立新美術館、2020)、「死神先生」(個展/KEN NAKAHASHI、2019)「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館、2019)、「霞はじめてたなびく」(トーキョーアーツアンドスペース、2019)、「オオカミの眼—The Iris of a Wolf」(BLOCK HOUSE、2017)、「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴—東京尾行」(個展/原美術館、2016)(すべて東京)など。第12回岡本太郎現代芸術賞特別賞受賞(2009)。