奥村 雄樹

孤高のキュレーター

2021 / ビデオ(29分56秒)

©︎ Okumura Yuki

CURATOR’S NOTE

作品中の台詞は、わたしたち(co-curators)の、Zoomやメールによる議論を忠実に再現したものではない。これは、この展覧会の「キュレーター(curator)」の独り言である。そのほとんどは確かにわたしたち自身の発言や文章であり、その感覚の記憶はわたしの口や耳に残っている。しかし編集と通訳、翻訳を介して、それらはわずかに別の文脈、別の声、別の文字へとずらされ、まるで別人のものであるかのようだ。わたし個人が議論の内外で抱えていた本当の葛藤は、ここにはない。幾重の翻訳を経て、作品の外部領域にこぼれ落ちた。

展覧会という企みは(もしかしたら作品も)、いくら言葉を尽くしても、人は完全に通じあえることはないという絶望から始まるのかもしれない。それでも人がこの営みを放棄しないのは、この企みから生じるかもしれない出会いや発見に幽かな希望を抱いているからだろう。たびたび言われるように、キュレーションとは夜空の無数の星々から星座を見出すことに似ている。つまり何光年も離れた光の瞬きのあいだに線を引き、何らかのイメージを結ぶことに。たとえ環境が変わってもこのことは変わらない。人はこれまでも、キュレーションという名のもとに、ときには細心の注意を払って、ときには蛮勇をふるって、さまざまな事物のあいだの距離を縮めたり、広げたり、捻ったりしてきた。奥村による今回の作品は、本展覧会に関するわたしたち(co-curators)の逡巡をもとに、キュレーター(curator)というイメージを描き出し、わたしたちの距離のとり方そのものを布置し直す。(M.T.)

主催者より注記:1995年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館の展示は”数寄-複方言への試み”であり、”Trans Culture”展は同年ビエンナーレ会期中にパラッツォ・ジュスティニアン・ロリンにて国際交流基金と福武学術文化振興財団との共催で開催されたものです。

CREDITS

分担

アンドリュー・マークル

映像

リー・キット

字幕

ミヤギフトシ

原文

遠隔会議

木村絵理子、近藤健一 、桝田倫広、野村しのぶ

録音

桝田倫広

書き起こし

内藤由樹

組み換え

奥村雄樹

製作

主導

奥村雄樹

指針

桝田倫広

協力

木村絵理子、近藤健一、野村しのぶ

支援

MISAKO & ROSEN(東京)
LA MAISON DE RENDEZ-VOUS(ブリュッセル)

補助

国際交流基金

謝意

マーティン・ゲルマン、ルシアナ・ハナキ、ジェフリー・ローゼン、ローゼン美沙子、ジュン・ヤン

PROFILE

photo by Yuki Naito

奥村 雄樹(おくむら・ゆうき)

1978年、青森県生まれ。現在、ブリュッセルとマーストリヒトを拠点に制作活動を行う。
奥村は、ビデオ、インスタレーション、パフォーマンス、キュレーション、翻訳など多岐にわたる実践に取り組んできた。例えば彼は1960年代から70年代にかけての美術動向や、河原温といった実際の作家などを取り上げ、再解釈や翻訳によってそれらに介入し、時にはフィクションのような挿話や設定を挟む。その過程で不可避的に生じる主客のずれによって、凝り固まった諸関係は一時的であれ可変的なものになる。
近年の主な個展に、「29771日–2094943歩」(ラ・メゾン・デ・ランデヴー、ブリュッセル、2019)、「彼方の男、儚い資料体」(慶應義塾大学アート・センター、東京、2019)、「Na(me/am)」(コンヴェント、ゲント、2018)、「奥村雄樹による高橋尚愛」(銀座メゾンエルメスフォーラム、東京、2016)など。