毛利 悠子

For the Birds

2021 / スピーカー、マイク、コンピューター、音声認識ソフト、LEDディスプレイ、鳥の餌、ほか

©︎ MOHRI Yuko

CURATOR’S NOTE

本作では、日本国内のとある遠隔地の森の風景がライブストリーミングで配信されている。現地では、スピーカーから流れるコロナ禍に関連する文言が偶然聞こえる周囲の音と交じり合い、マイクで収音される。これは音声自動認識プログラムにより奇妙な言葉に変換され、この音声出力→収音→誤変換という過程が繰り返されフレーズは変わっていく。言葉の誤変換を表現することはサイバースペースの中だけでも可能だが、毛利は意図的に現実世界を介入させる。今日私たちが体験しているリアルとバーチャルの混乱が、言葉の混乱に重ねあわされているかのようである。

本作はジョン・ケージとダニエル・シャルルの対談集『小鳥たちのために』(1982年、青土社)に想を得たもの。ケージの苗字「Cage」は「籠」をも意味するが、移動を制限された今日の私たちも籠の中の小鳥と同様であろう。その中に閉じ込められた私たちはネット上で(時に作為的に)事実と異なる内容にズラされ変化していく無数の言葉を読むという、コロナ禍の日常を作家は念頭に置いている。現地には鳥の餌付けも置かれるが、現在、「鳥のように自由」(free as birds)という言葉以上に私たちよりも自由な鳥たちは、本当にこの誤変換のループに加わってくれるのだろうか? (K.K.)

*作品で使われている変換前のフレーズ

Social Distancing
To adapt to the new normal
State of emergency
Keep distance
Wear a Mask
Wash your hands
Cover your mouth and nose
Thank you for your understanding and cooperation
Self-quarantine
Stay home
Refrain from going out unless necessary
Work from home

Join by Video
Some people are already infected by COVID-19
Pandemic-level increase in patients
Please practice proper hand washing and gargle with mouthwash whenever possible
Do you have symptoms such as a fever or cough?
Preventing the spread of infection
Keep rooms reasonably humid and ventilated
Enough rest
I will get vaccinated next week
Social Distance
For the Birds

CREDITS

プログラミング

濱哲史

ストリーミング

田中信至

協力

吉住公一郎

PROFILE

© Kenshu Shintsubo

毛利 悠子(もうり・ゆうこ)

1980年神奈川県生まれ。現在、東京都在住。日用品や玩具、楽器、機械の部品、水や光など多様な物を組み合わせ、立体作品やインスタレーションを制作する。作品の各構成要素の動きや反応は連鎖し、意外性に富んでおり、また、磁力や重力、気流といった目に見えない力を可視化する。マルセル・デュシャンやウラジーミル・タトリンなど近代芸術を参照する作品もいくつかある。また、物の動きを音に変換したり、音の遅延やズレ、反響などを利用したりするなど、サウンドが核となる作品も多い。

主な展覧会に、個展「ただし抵抗はあるものとする」(十和田市現代美術館、青森、2018)、個展「ヴォルータ」(カムデン・アーツ・センター、ロンドン、2018)、「第9回アジア・パシフィック・トリエンナーレ」(ブリスベン、2018年)、「ジャパノラマ:1970年以降の美術の新しいビジョン」(ポンピドゥー・センター・メス、メス、2017)、「ヨコハマトリエンナーレ2014」(神奈川、2014)、など。