荒木 悠

双殻綱:第二幕(右)

2021年、ビデオ(17分15秒)

©︎ Yu Araki

CURATOR’S NOTE

貝とは儚さ。貝殻は死にゆく運命の寓意。そして魂の抜けた身体もまた抜け殻になぞらえられる。

貝とは彫刻。貝の表面には二つとして同じ形状を持たない生命の彫刻が施されている。

貝とは寡黙さ。緊張すると堅く口を閉ざしてしまうが、幸せになると唄い出すという。

貝類が地球上に誕生してから5億5千万年といわれる。人間よりはるかに長く、太古の昔から生息してきた貝。そんな貝の歴史を知ってか知らでか、人間は一方的に貝に対してある種の敬意を持って伝説や神話を語り、象徴的意味やアレゴリーを求め、あるいは、日々の食卓を彩る食材として親しんできた。そして、タイトルの「Bivalvia」とは、貝の中でも二枚貝という分類を指すラテン語の学名(二枚貝綱、旧称:双殻綱)であり、2枚の殻は左右に分かれる。
荒木悠は世界各地で豊かな物語や比喩、教訓や寓意をまとってきた二枚貝を起点に、連想と空想の連作歌劇を作り上げる。第二幕となる本作は、一つの疑問から出発する。他ならぬ貝自身は、人に対して、現在の地球に対して、何を思うのだろうか?と。荒木はこの疑問を解明するために、貝へのインタビューを試みる。貝は何を語り、貝と人間とのコミュニケーションは成立するのか?今ここにある作品が右殻であれば、対になるべき左殻はどこにあるのか?そう、この歌劇は日本とオーストラリア、北半球と南半球を右殻と左殻に見立てて、パラレルに展開するのである。(K.E.)

CREDITS

構想・編集・監督

荒木悠

出演

テイシャ・ハミルトン、小山友也、相原岳弘 / マガキ、ツキヒガイ、ヨーロッパヒラガキ、ホタテガイ、ムラサキイガイ

牡蠣ぬいぐるみ制作

田村なみちえ、三野舞果

水中撮影

奥村康(日本水中映像株式会社)

水中照明

佐藤さやか(日本水中映像株式会社)

水中キャスティング

坂田昌彦(日本水中映像株式会社)

水中撮影(オーストラリア)

カイ・ワシコウスキー

陸上撮影

王博、荒木悠

音楽

田中文久

サウンドデザイン

荒木優光

グラフィックデザイン

宮村ヤスヲ

英語監修

スチュアート・ムンロ

オペラ

「エウリディーチェ」(1600年)

作曲

ヤコポ・ペーリ

台本

オッターヴィオ・リヌッチーニ

キャサリン・アレン

ギター

デニス・ヴァン・ルーイェン

録音

ルアリ・キャンベル

図版

カール・アンドレアス・オーガスト・グース、《オルフェウスとエウリュディケ》1826年、油彩、コペンハーゲン国立美術館

《オルフェウスとエウリュディケ》1900年頃、A.カウフマンの原画をT.ブルケが点刻彫板法により制作した複製画(1782年)からのカラー複写

武蔵石寿、服部雪斎・画『目八譜』、1843年、国立国会図書館

ロケーション協力

はまゆうマリンサービス(静岡県沼津市大瀬崎)、blanClass(横浜)、コンフォートカラオケ UTAZOO(東京)、くしろ 炉ばた(釧路)、Endeavour Oysters(シドニー、オーストラリア)、Rijksakademie van beeldende kunsten(アムステルダム、オランダ)、Oesterij BV(ヤーセケ、オランダ)、Koninklijke Prins & Dingemanse(ヤーセケ、オランダ)

Special thanks

アンナ・オルリコフスカ、クーン・デ・ローイ、ロッテ・ナイホフ、オマー・イマム、ホセ・ビスカヤ、アレンド・ナイカンプ、マルコ・ウィッテフェーン、エリック・サネン、ジャン・ドーゲ、マーティン・ファン・デル・スルージ、ペドロ・デ・アルメイダ、マイケル・ドウ、小田井真美、志村春海、田中麻里奈、貞末彰子、長谷川新、田村よりこ、里見有祐、鈴木拓三、小林晴夫、安部祥子、無人島プロダクション

製作

国際交流基金

制作協力

アーツコミッション・ヨコハマ、シドニーオペラハウス、ジャパン・ファウンデーション・シドニー

キュレーター

木村絵理子

PROFILE

©︎ Yu Araki

荒木 悠(あらき・ゆう)

1985年、山形県生まれ、東京都を拠点に活動。
文化の伝播や異文化同士の出会い、その過程で生じる誤解や誤訳から生まれる可能性に着目し、歴史上の出来事と空想との狭間にある物語を編み出し、現代を舞台に創造的に再現するような手法で映像作品やインスタレーションを制作する。
近年の主なグループ展に、「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」(ポーラ美術館、神奈川、2020)、「The Island of the Colorblind」(アートソンジェ・センター、ソウル、2019)、「Future Generation Art Prize」ファイナリスト(ピンチューク・アートセンター、キエフ、2019)、2017年「The Way Things Do」(ジョアン・ミロ財団現代美術研究センター、バルセロナ、2017)、「岡山芸術交流」(岡山、2016)など。2018年、ロッテルダム国際映画祭で共同監督作品《Mountain Plain Mountain》が招待作品としてタイガー・アワードを受賞するなど、数多くの映画祭にも出品。